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   日本音楽療法学会 信越北陸地区第2回学術集会 
              
2004年6月13日 金沢市 石川県立音楽堂
    高齢者の音楽の好みとその特徴

               三井徳明(金沢医科大学)

   1.はじめに
 曲目は、いわゆる懐メロといわれるものや,ヒット曲などであり、セラピストの自主的判断によるところが多い。その根拠を明白にするためアンケート調査を行ったところ意義を認めたので考察を加え報告する。

   2.目的
 高齢者に対する音楽療法を行うための曲目選択の目安とするために高齢者の音楽の好みとその特徴を調べること。  
    3.対象及び方法
 対象者は介護保険で定められている65歳以上の対照群(以下対照群と略す)男性29名、女性43名と、51歳から64歳のまでの比較群(以下比較群と略す)男性27名、女性48名、それぞれの合計147名に対し年齢、性別、職業、趣味、音楽が好きであるかどうか、好む音楽のジャンル譜音楽を聴くことや歌うことによって得られるもの、今までに聞いた音楽のなかでで特に印象に残る年代の音楽はどの時期か、現在の音楽への感情など未記名による■7目のアンケート調査を石川県内灘町とその周辺に住む人々に行すた.。
   4.結果
 1.音楽がとっても好き、好きですと答えた人は対照群では87%、比較群で90%2.テレ'ビ・ラジオやCD・カセット・テープなどで音楽を聞くことが好きと答えた人は対照群では男性72%、女性77%で、比較群では男性70%、女性83%であった。また歌うことがとっても好きい好きですと回答した人たちのうち対照群では男性52%、女性42%が、比較群で縁男牲170%女性31と性差が見られた。3.音楽を聞くことや好みの曲を歌うことによって得たものとして、心が和む、安らぎを感ずる、楽しく生き生ぎしてくるなどと答えた。4.好きな音楽ジャンルについては対照群く比較群とも演歌・歌謡曲80%以上と多数を占めた。その一方比較群では欧米のポップスを好む人もあり世代格差も認められた。5.聞いてもっとも影響を受けた世代の音楽について対照群では20代で、比較群では10代・20代が多数であった。そして石川県内で民間放送局のテレビ放送開始約1年後より急激なテレビの普及を見た昭和35年頃と答えた例が対照群に多くみられた。この結果より人気歌手がの前で歌うなどのマスメディアが与えた影響も大きいと思われる。6.趣味との関係では友人や知人と話すことやお茶を飲むこと、各種スポーツ活動をあげた人たちには特に音楽を好む傾向が強かった。7.高齢者が音楽を聞く媒体としてはCDやカセット・テープよりも、むしろテレビやラジオなどをあげた人が多かった。その傾向は特に女性に多く見られた。8.好きな曲目について群では青春時代のものをあげる例が多くみられたが、対照群では戦時中の軍歌や戦後まもなくの歌謡曲やジャズ・ソングは80歳代では10代から20歳代、70歳では戦後まもなくは10台であるが世代的インパクトは薄:く。あまり好まれていない。9.両群とも女性のほうが男性よりも新しい音楽作品を好んで受容する傾向もみられた。
   5.考察
 今回行ったアンケート結果の協力者の大多数が健康な高齢者であった。回答に性差があること、そして高齢者の音楽の好みを十分把握するためには回答者数が十分とは言えないこと。しかしながら我が国ではこのような研究はあまり行われていない。今回の調査結果では対照群、比較群とも音楽を聞くこと、カラオケなどで歌うことを好む人が高齢者に多く、楽しく感ずる、心が和むなど音楽を受容することによって得られたものは非常に大きい。音楽を好む人は外向的であることなど新たな結果を見たことよりこの研究の意義は大きい。また今まであまり注目されていなかった健常高齢者への音楽療法の必要性についてもこのアンケート調査より新たな事実がわかった。今後5年以内には60代が、10年前後には50歳代の比較群もタイw将軍の年齢に達する。そのため今回の調査結果と後の変化過程に注目したい。現在各地域で行われている民謡教室、カラオケ大会など音楽を通じた地域活動は極めて重要である。高齢者が大きな声で歌うことによる肺活量の増加、音楽を聴くことによるリラクゼーション効果なども指摘されている。このことより高齢者の健康維持、ぼけ防止、コミュニティー強化など予防医学、高齢医学精神医学のひとつの手段として健常高齢者への音楽療法も重要視されるべきである。その結果音楽療法士の職域拡大と社会的認知度も高くなるであろう。
 今後病院や施設にいる人たち、身体に障害を持つ高齢者に対する調査も進めてゆきたい。そして内容の充実を図るための音楽社会学など他分野の研究も重ねより良い音楽療法サービスのためにも今後の研究活動を続けてゆきたい。