第回日本音楽療法学会学術大会
                                
 
                              2022年9月〜10月  オンライン

                          三井 典明(日本ポピュラー音楽学会)

 「公募ワークショップ」 
                          

キャンディーズ、ピンク・レディーがテレビを通じ人々に与えたもの
〜1970年代中期から後期の社会現象を音楽療法場面にどう
生かすか?〜

{研究の目的}
 1970年代中期から後期にかけてキャンディーズ、ピンク・レディーは様々な形で人々に大きな影響を与えたこと。テレビ・アイドル歌手全盛期時代を後世へ伝えること。音楽療法の現場にこの時代の音楽をどう生かすか?
{方法}
今回取り上げた二つの女性グループの情報や音源の収集。当時の世相や社会記事の収集。当時から現在までのファンであり続ける人たちの証言記録などを知るために文献やネット記事を閲覧した。
{結果}
 1970年代に入りカラーテレビが急激に普及し一人あたりのテレビ視聴率は現在より高かった。音楽番組も数多く作られ高視聴率を背景に番組内からも多くのアイドル歌手が出現した。
 今回取り上げたキャンディーズは欧米の人気ガール・グループをヒントに作られた。彼女たちに提供された曲目は明るくなじみやすい欧米風のポップ曲である。「年下の男の子」「春一番」「微笑みがえし」など今も知られるヒット曲があり日本で最も成功したガール・グループである。特に可愛さが際立ち同世代の男性を主に年齢性差を超えた人気者となった。熱狂的なファンも多くコンサート開始数時間前にはコンサート会場に駆けつけ終了後彼女たちの移動先を数日間追い続ける「追っかけ現象」と呼ばれた社会現象が見られた。一方ピンク・レディーにはディスコ・タッチの軽やかでなじみやすい曲目が多く提供された。「ペッパー警部」「サウスポー」「UFO」など1976年から4年間で9曲のスマッシュ・ヒットを記録しレコードやカセット・テープの出荷数は1000万枚以上の歴史的セールスを記録した。特に派手なステージ衣装と個性的なアクションはこの当時幼少期の子供たちから親世代までの広い世代に人気を集めた。そして彼女たちの振り付けや歌い方をまねる子供たちは多く母親・祖母は子供たちとともに歌い振り付けをまねて遊んだ。それは現在も語り続けられている社会現象の一つである。
 この二つの女性グループの売り出し方にはレコード会社、音楽プロデューサ、マスメディアの関与は大きく関わった。キャンディーズは「普通の女の子に戻りたい」という有名な言葉を残し1978年4月4日3年半で解散したが現在もファンであり続ける人は多く「キャンディーズへの手紙」というファンレターを集めた書物もある。ピンク・レディーも人気は薄れ1981年3月31日解散した。再結成がなされマスメディアは大きく取り上げた。
{考察}
 わが国では1960年代ザ・ピーナッツ、こまどり姉妹といった双子女性デュオが活躍した。3人以上のガール・グループとしてはスリー・キャッツ「黄色いサクランボ」スリー・グレーセス「山のロザリア」はよく知られているが彼女たちには記録に残るヒット曲は他にない。その後テレビに多く出演したガール・グループもいた。しかしヒット曲はなく活動期間は短かった。そんな中で多くのヒット曲を残したキャンディーズの成功は異例であるといえよう。一方ピンク・レディーは記録に残る多くのスマッシュ・ヒットがあり歴史的レコード・セールスを記録した。そして派手なステージ衣装と個性的なアクションは当時幼少期の子供たちや母親、祖母世代に大きなインパクトを与えた。
 今回1970年代中期から後期にかけて活躍した二つの女性グループの活動時期をリアルタイムで知る人たちは現在60歳以上である。この当時幼少期であった人たちも現在40歳代中期から後期に入っている。そのため音楽療法の現場においても近い将来高齢期を迎える世代、身体に変調をきたし精神的に不安定要因を持つ人たち、同世代で病院施設などで働く人たちへのセルフケアのためにも音楽療法士の果たす役割は大きい。サービス提供手段としてのポピュラー音楽と社会をよく知っておくべきである。そのため本研究には意義があるといえよう。
{結語}
 より質の高い音楽療法サービスを施すためにも様々な分野の研究者との連携が大切である。
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